日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)と共同で、世界最高効率となる大気干渉下での光無線電力伝送に成功しました。この成果により、両社は、被災地や宇宙空間での電力供給システムなど、ケーブルが敷設・利用できない長距離を正確に送電する技術の開発を推進。
この研究成果は8月に科学雑誌『エレクトロニクス・レターズ』に掲載され、タイトルは "Demonstration of 15% Efficient Optical Wireless Power Transmission Over 1 km With Atmospheric Turbulence"。
ワイヤレス電力伝送:マイクロ波とレーザービームの比較
現在、ワイヤレス電力伝送には主に2つの方法が存在し、最も一般的な実用展開ではマイクロ波が使用されています。しかし、マイクロ波を使用する送電技術は、熱や風などの大気干渉がある実環境下で送電が行われる場合、送電範囲、コスト、効率、効果に限界があります。
その強い指向性により、レーザービームを使用する光伝送技術がこの問題の解決策となります。しかし、このような光学ベースの技術の実用化には限界があります。それは、長距離のレーザー光を電力に変換する(光電変換)効率が低いためであり、この問題は大気干渉によってさらに悪化します。光電変換効率を向上させるには、長距離伝搬中のレーザービームの強度分布を改善する必要があります。
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ワイヤレス光パワー伝送の世界記録を達成
ビーム強度の均一性を高めるため、NTTはアキシコンレンズと凹レンズを組み合わせたビーム整形技術を採用。より平坦化されたレーザービームは、大気干渉を拡散するビームホモジナイザーを通過し、受光パネルに導かれます。NTTは透過光学系(ビーム整形技術など)を、三菱重工は受光光学系(受光パネル、ホモジナイザー、コンデンサーなど)を設計・製作しました。
2025年1月と2月に NTT そして 三菱重工 和歌山県西牟婁郡白浜町にある南紀白浜空港の滑走路で光無線電力伝送実験を実施。滑走路の一端にレーザー光を照射する光学系を備えた送信ブースを設置し、1km離れた場所に受光パネルを設置した受信ブースを設置。
送信時は、レーザーの光軸を地上から約1mの低い位置に設定し、水平にアライメント。そのため、ビームは地面の熱や風の影響を強く受け、特に大気の乱れが強い条件下での実験となりました。
実験の結果、受信パネルからの平均取出し電力は152Wとなり、ワイヤレス電力伝送効率は15%(送信電力に対する受信電力の比率で定義)となりました。さらに、30分間の連続送電に成功し、この技術による長時間の送電が可能であることが確認されました。
この結果は、シリコンベースの光電変換素子を用いて、強い大気干渉の条件下で実証された世界最高の光無線電力伝送効率となります。
ソース ビジネスワイヤー

