量子科学技術研究開発機構と日本電信電話株式会社は、大型核融合装置のプラズマ閉じ込め磁場に適用するAI予測手法を確立しました。
QSTとNTTは2020年に連携協定を締結し、世界に先駆けた革新的な環境エネルギー技術の創出を目指して共同研究を進めてきました。
今回、状況の変化に応じて最適なAIモデルを重み付けして統合するMoE(Mixture of Experts)という手法を適用して、高精度にプラズマを予測する技術を確立し、世界最大のトカマク型超伝導プラズマ実験装置JT-60SAの実際のプラズマ閉じ込め磁場を評価しました。その結果、磁場構造に依存するプラズマの位置や形状を、実際のプラズマ制御に必要な精度で再現することに世界で初めて成功しました。従来の物理法則に基づく解析的再現手法では、逐次変化するプラズマ境界(周辺部)の位置や形状を原理的に制御することができました。しかし、この手法では、プラズマの不安定性を回避するために重要なプラズマ内部の電流分布や圧力分布など、従来の手法では不可能だった複数の制御量をリアルタイムで制御することが可能になりました。
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この成果は、今後JT-60SAで行われる加熱実験において、高温プラズマのリアルタイム制御に挑戦する上で有用であり、ETERや原型炉のように、より大きなプラズマを少数の計測器で制御する核融合炉のプラズマ予測制御につながる画期的な成果です。この結果を受けて QST そして NTT は、2020年に締結した協力協定をさらに延長することに合意し、核融合エネルギーの早期実用化に向けて引き続き協力していきます。
革新的な環境エネルギーである核融合エネルギーの原型炉として世界最先端を行くトカマク炉は、プラズマ自体に流れる電流によって閉じ込め磁場が形成されるため、プラズマに電流を流し続ける必要があります。しかし、電流や圧力によって不安定性が生じる可能性があります。安定な原型炉を利用するためには、このような不安定性を事前に予測し、適切に制御することが重要であり、制御に必要なプラズマ閉じ込め磁場を計測信号からリアルタイムで高精度に再構成する手法を確立することが課題でした。本共同研究では、その解決策の一つとして、世界最大級のトカマク型超伝導プラズマ実験装置JT-60SAの制御に活用することを目指し、最適化問題を得意とするAI技術を用いてプラズマ閉じ込め磁場を高精度に評価する手法を開発しました。
ソース NTT