順天堂大学と日本アイ・ビー・エム株式会社は4日、順天堂大学医学部順天堂医院(以下、順天堂病院)の入院患者の退院後の最適な医療機関への転院を支援する「PFM(Patient Flow Management)AIマッチングシステム」の構築・運用に着手したと発表しました。これにより、入院患者の住所や病名などの個人情報をもとに、自分らしい生活を継続できる最適な医療機関へ転院できるシステムを構築します。
各医療機関との連携を強化する仕組みで、国が求める医療機関の機能に応じた役割分担を確立し、地域医療連携を推進することが期待されています。今回の取り組みについて、「超高齢社会の到来を見据えた医療提供体制の構築が加速しており、医療機関の機能に応じて役割分担を行い、他の機能を持つ医療機関との連携を強化する『地域包括ケアシステム』が求められている」と説明。
また、入院前に患者の基本情報を収集し、入院中に詳細な情報を追加することで、早期から適切な時期に適切な環境へ転院させることが可能となり、入院前から退院後までをエンドツーエンドで支援するPFMの重要性も高まっています。順天堂病院ではPFMを導入し、入院支援センターと退院支援チームが連携して、入院前の基本情報収集から在宅療養や地域の医療機関への転院の手配まで退院支援を行っています。しかし、退院先候補を検索する既存の退院支援先検索システムは、電子カルテと連携しておらず、電子化されていない退院先候補もあり、医療スタッフの調整負担が大きいという課題がありました。
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また、過去の転院先候補医療機関や最終的な転院先の情報など、プロセス全体に関わるデータを蓄積・活用する仕組みもありませんでした。順天堂大学が日本IBMの協力を得て開発中のPFM AIマッチングシステムは、クラウド上に安全に保管された電子カルテのバックアップデータと連携し、世代AIを活用することで、患者ごとに最適な転院先医療機関をより効率的に検索・提示します。本システムの導入により、同意患者の退院調整業務が20%以上効率化すると試算しています。また、同システムは、患者の退院時の支援先を決定するプロセスに関するデータを蓄積する機能も有しており、今後は、病歴や地域が同じ転院先のリストだけでなく、施設関連データだけでなく、ソフト関連データも蓄積することで、AIが候補施設を提案し、総合的に判断してAIのマッチング精度を向上させる計画です。本システムは、同意を得た患者のIDをもとに、病名や患者・家族の住所の近さなどの条件を満たす施設をAIがマッチングすることで、医療スタッフと患者の双方が納得のいく転院先を決定でき、患者の満足度向上に寄与すること、医療機関までの経路を交通手段(電車・車・徒歩)別に地図上に表示することで、転院後の受診や家族への支援をより具体的にイメージでき、医療サービスの質の向上に寄与することを特長として開発しました。
また、候補者や選択した施設をダッシュボードに表示し、施設に関するメモを記録することで、看護師など退院支援を行う医療従事者間での情報共有が可能となり、業務の効率化を実現します。また、IBMのAI開発スタジオ「watsonx.ai」が提供するジェネレーティブAIを活用した対話型検索により、システム画面に表示されない患者情報や施設情報を取得することも可能で、受け入れ施設とのやりとりの効率化を目指します。将来的には、看護師やソーシャルワーカーが患者とともにタブレット端末で「PFM AIマッチングシステム」を閲覧し、患者一人ひとりのニーズを確認しながらリアルタイムに情報提供することで、効率的できめ細やかな医療サービスの実現に貢献します。順天堂大学と日本IBMは、地域医療連携を全国規模で推進するため、今後、「PFM AIマッチングシステム」の登録医療機関の拡大を目指します。また、マルチクラウドへの対応や、様々な電子カルテシステムとの連携が可能なシステムへと発展させていく予定です。さらに、リハビリテーション施設や通所リハビリテーション施設の登録数を増やし、在宅療養者へのサービス拡充を図る予定。
これにより、患者さんと適切な機能を持つ医療機関をつなぎ、全国の医療機関が連携するエコシステムの構築・拡大を目指すとともに、患者さんを適切な時期に適切な環境へ早期退院させることで、入院費などの医療費の削減につながり、将来的には社会保障費の削減にも貢献します。
ソース ヤフー