米クラウドセキュリティ企業のウィズが都内で記者会見を開き、日本での事業展開を本格化すると発表。3月にグーグルが$320億円で買収すると発表し、急成長が注目されていた同社。同社は2020年3月にイスラエルで設立され、本社は米国ニューヨーク。2022年8月にはソフトウェア企業で最速となる年間経常収益(ARR)$1億円を達成し、2024年5月には時価総額$120億円の「サイバーセキュリティ・ユニコーン」としても評価。2024年11月には日本法人「ウィズ・クラウド・ジャパン」を設立し、代表にはヴイエムウェア・ジャパンの社長を務めた山中直氏が就任。説明会に登場したダリ・ラジッチ社長兼COOは、"フォーチュン100社へのアプローチからスタートし、規制要件の厳しい大企業のクラウドセキュリティの課題に対応することで、クラウドセキュリティ市場全体のニーズに応えることができ、お客様のクラウドの俊敏性と安全性の両立に注力しています。"とコメント。Wizの主力製品はCloud Native Application Protection Platform(CNAPP)で、Amazon Web Services(AWS)、MicrosoftのAzure、Google Cloud、OracleのOracle Cloud Infrastructureなどのハイパースケーラーを含むマルチクラウドに対応しています。
同社の最大の特徴は、アプリケーション開発からワークロード保護までをカバーするクラウドネイティブなセキュリティ運用プラットフォームです。ラジッチ氏によると、フォーチュン100の顧客企業の半数が同社のソリューションを導入することでセキュリティリスクを大幅に低減しており、顧客企業の担当者のうち50%近くが開発部門に所属しているとのこと。また、企業や組織がマルチクラウドを活用してビジネスを拡大し続ける中で、IT環境が拡大・複雑化し、サイバー攻撃の標的となりやすい「アタックサーフェス(攻撃対象領域)」も拡大していると指摘。また、各種管理主体も開発、運用、セキュリティ、各事業部門が複雑に混在しており、従来のようにセキュリティ部門任せでクラウド環境のセキュリティを運用することは極めて困難です。
これらは、企業や組織のセキュリティリスクを高めるとともに、ビジネスの成長に寄与する俊敏性といったクラウドのメリットも損ないます。また、AIの活用が普及する今後、価値創造とリスク増大のギャップはますます広がっていくと指摘。そのため同社は、クラウドがもたらす3つのポイントに沿ったセキュリティソリューションの開発を進めています:"新たな環境の可視化" "新たなリスクへの対応" "新たな所有モデル"同社のセキュリティプラットフォームは、クラウド環境のセキュリティ態勢を管理する「Wiz Cloud」、アプリケーションの開発ライフサイクルに合わせてコードやパイプラインで脆弱性対策や権限、設定を管理する「Wiz Code」、コンテナなどのクラウドワークロードを保護する「Wiz Defend」で構成。Wiz Cloudはエージェントレスで迅速に導入でき、Wiz Defendはエージェントを通じてリアルタイムにワークロードを狙う脅威を防御できます。また、「Wiz Cloud」「Wiz Code」「Wiz Defend」のセキュリティに関する様々な情報を集約・統合し、コンテキストを付加することで様々な情報を共有するセキュリティグラフデータベースを用意。
こちらもお読みください: CardinalOps、SCSKパートナーとともに日本でのSIEMを強化
これと自社や各種脅威インテリジェンスを組み合わせることで、顧客環境で顕在化する可能性のある実際のリスクの特定、対応の優先順位付け、適切な担当者(開発チーム、ITチーム、セキュリティチームなど)によるリスク低減を一気通貫で行うことが可能になるとのこと。ラジッチ氏は、日本企業のクラウド活用は諸外国に比べて遅れていたが、AIの活用が急速に進み始めており、今後はマルチクラウドの活用が急速に進むと予想。また、上記のようなセキュリティ上の課題に直面することが予想され、同社のセキュリティソリューションの需要が高まる契機となることから、本格的な事業展開を発表したもの。Wizクラウドジャパンの山中社長は、クラウドネイティブな俊敏性とエンタープライズレベルのセキュリティを両立させることがWizの強みであるとし、"DX(デジタルトランスフォーメーション)やAIによる日本企業のイノベーションを実現する攻めと守りのデジタル戦略の推進に貢献したい "と述べています。山中氏によると、同社はすでに30人以上を採用し、2025年までに国内50人以上の体制を目指しているとのこと。
また、「Wizクラウド」「Wizコード」「Wizディフェンド」の提供基盤を東京と大阪のデータセンターに構築し、これらのサービスのローカライズ、日本語によるカスタマーサポート体制の構築、国内パートナー向けプログラムの開発、認証・技術研修、ドキュメントの日本語化などに取り組んでいます。また、金融情報システムセンター(FISC)のセキュリティ基準の導入も進めています。グーグルによる買収は現在、米国当局との審査手続き中。ラジッチ氏は、"現段階では、今後の詳細な情報をお伝えすることはできませんが、2026年までにプロジェクトを完了する予定です。"とコメントしています。グーグルの発表によると ウィズ は買収完了後 Google Cloud の一部となり、ハイパースケーラを含む複数のクラウドを引き続きサポートする予定です。グーグルは2月にもチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズとの戦略的・技術的協業を発表しており、チェック・ポイントは自社のCNAPPをWizに移行するなどの施策を進めています。ラジック氏は、「我々のプラットフォームはオープンなアプローチで、150を超えるサードパーティとオープンにつながっています。チェック・ポイント社との協業は、今後も拡大していく新しい形の協業の始まりです。"